アンチ・ドーピングとは?初心者でもわかる基本ルールと検査の流れを完全解説

トレーニング雑学

スポーツをしているとドーピングという言葉を耳にすることがあります。でも、「何がドーピングになるの?」「検査ってどんなことをするの?」と疑問に感じる方も多いのではないでしょうか。

この記事では、アンチ・ドーピングの基本ルールと検査の流れを、スポーツ初心者にもわかりやすく解説します。日本アンチ・ドーピング機構(JADA)やパワーリフティング協会(JPA)の規定をもとにまとめています。

ドーピングとは、スポーツにおいてパフォーマンスを向上させるために、禁止されている薬物や方法を使用することを指します。代表的なものとしては、筋肉増強効果のあるアナボリックステロイドや、持久力を高めるEPO(エリスロポエチン)などがあります。

ドーピングはフェアプレーの精神に反するだけでなく、選手の健康を大きく損なう危険性もあります。そのため、日本でもJADA(日本アンチ・ドーピング機構)が中心となってルールの整備と検査を行っています。

「ドーピング=禁止薬物の使用」と思われがちですが、実は世界アンチ・ドーピング規程では合計11種類の行為が違反として定義されています。知らなかったでは済まされないものも含まれるので、しっかり確認しておきましょう。

No.違反項目わかりやすく言うと
1禁止物質の存在尿や血液から禁止物質が検出されること
2禁止物質・方法の使用または企て実際に使用すること、または使おうとすること
3検査の拒否または回避正当な理由なく検査を断ること
4居場所情報の義務不履行指定アスリートが居場所の更新を怠ること
5ドーピング・コントロールの妨害検査の流れを邪魔すること、またはしようとすること
6禁止物質・方法の所持正当な理由なく禁止物質を持っていること
7禁止物質・方法の不正取引禁止物質を不正に売買・入手しようとすること
8アスリートへの使用・企てコーチなどがアスリートに禁止物質を使わせること
9違反への関与・共謀違反を手助けしたり、唆したりすること
10違反関与者との関係違反歴のある人とスポーツの場で関係を持つこと
11通報者の阻止・報復告発を妨げたり、告発者に報復したりすること

特に注意したい「意外な違反」

多くの人が見落としがちなのが、検査の拒否(第3項)通報者への報復(第11項)です。たとえ薬物を使っていなくても、検査を正当な理由なく断れば違反になります。また、ドーピングを告発した人に嫌がらせをすることも立派な規則違反です。

実際のドーピング検査(ドーピング・コントロール)は、決められた手順に沿って厳格に行われます。ここではその流れを4つのステップに分けてわかりやすく説明します。

ステップ① 通告と移動

ドーピング検査員(DCO)またはシャペロン(付添人)が選手に接触し、身分証を提示した上で検査の通告を行います。通告書に署名した瞬間から、検査が完了するまで選手はDCOの視界内に留まる義務が生じます。表彰式への出席や治療といった正当な理由がある場合は、DCOの許可を得たうえで用事を済ませることができます。

ステップ② 採尿(検体採取)

次は尿の採取です。選手は以下の手順で進めます。

  • 複数の採尿カップの中から自分で1つを選び、破損がないか確認する
  • 石けんを使わずに手を洗う(石けん成分が検体に混入しないようにするため)
  • 同性のDCOが直接排尿を確認できるよう衣服を調整し、90ml以上を採取する

⚠️ 注意!水分の飲みすぎは禁物。尿が薄まって比重(濃度)の基準を満たさない場合、何度も採取を繰り返す必要があります。

ステップ③ 検体の封印と比重測定

採取した尿は専用キットに封入します。ボトル・キャップ・箱・シールの番号がすべて一致しているか確認したうえで進めます。

  • DCOの指示に従い、尿をBボトル、次いでAボトルに注ぐ
  • 自分でしっかりとキャップを締めて封印する
  • 残った尿で比重(濃度)を測定する

比重の基準は採取量によって異なります。

  • 90ml以上の場合:比重 1.005以上
  • 150ml以上の場合:比重 1.003以上

ステップ④ 書類確認と署名

過去7日間に使用した薬やサプリメントを申告し、記載内容をすべて確認したら公式記録書に署名して検査完了です。

世界アンチ・ドーピング規程では、18歳未満のアスリートを「未成年(Minor)」として特別に保護しています。

  • 検査のすべての工程に、信頼できる成人(コーチ・保護者など)を同伴させる権利がある
  • 採尿の際、同伴者はDCOを監視できる(ただしアスリートの要請がない限り、排尿を直接見ることはない)
  • 大会参加時は「18歳未満競技者親権者同意書」の提出が必要(原則1回の提出で有効)

保護者の方は、お子さんが大会に参加する前に同意書の準備を忘れないようにしましょう。

持病や怪我の治療のために禁止物質を含む薬を使わなければならない場合に利用できるのが、「TUE(治療使用特例:Therapeutic Use Exemptions)」という制度です。事前にTUEの承認を得ることで、禁止物質を使用していても違反とはみなされません。

TUEが認められる主な条件

  • 治療を行わないことで健康に重大な影響が出ること
    (適切な臨床的証拠に基づく診断であること)
  • 禁止物質を使わない代替治療がないこと
  • 健康を取り戻す以上に競技力を向上させない
  • ドーピングの副作用に対する治療ではない
    例→ステロイド乱用による副作用を治療するためにTUEを申請しようとしても、この条件により認められません。

TUEの申請の流れ

  1. 医師に相談:禁止物質を含まない薬への変更が可能か確認する
  2. 書類準備:TUE申請書(医師記入欄は英語)、診断書、検査結果などを用意する
  3. 提出:JADAなどのアンチ・ドーピング機関へ郵送する
  4. 審査:3名以上の医師で構成されるTUE委員会が審査を行う(結果まで通常数週間かかる)

💡 緊急治療など、やむを得ない事情がある場合は、使用後に「遡及的申請」を行うことも可能です。

パワーリフティングでは、JPA(公益社団法人日本パワーリフティング協会)の規定により、一般的なアンチ・ドーピングのルールに加えて独自の義務があります。

全国大会出場に必要な2つの義務

  • アンチ・ドーピング講習会の受講証明書の提示(有効期限:受講から1年間
  • 参加申込時に「摂取医薬品・サプリメント申告書の提出

これらを怠ると、大会への出場が認められない場合があります。必ず事前に確認しておきましょう。

違反が確定した場合のペナルティ

規則違反が確定すると、競技成績の取り消しに加え、制裁金の支払いも課されます。国際大会での違反の場合、制裁金は全額または所属団体との折半となります。

簡易ドーピング検査について

全国規模の大会や東京都パワーリフティング協会などの地方団体では、皮膚の拭き取りなどによる簡易ドーピング検査」が実施されるケースがあります。法的な罰則はありませんが、公正性の確保と啓発を目的としています。

検索ツールやアプリの活用

Global DRO(グローバルDRO)

インターネット上で使用できる物質検索サイトで、日本アンチ・ドーピング機構(JADA)関連の資料でも有効な検索手段として紹介されています。

Global DRO(グローバルDRO)

スマートフォンアプリ

処方された薬が禁止薬物かどうかを判別できるアプリをスマートフォンに入れ、日頃から調べる癖をつけている選手もいます

専門家への相談

スポーツファーマシスト

最新のアンチ・ドーピング規則に関する知識を有する薬剤師です。「スポーツファーマシスト検索」を利用して探すことができ、中にはLINEなどで気軽に相談を受け付けている方もいます

薬剤師会への問い合わせ

都道府県の薬剤師会に直接問い合わせることも推奨されています

JPA(日本パワーリフティング協会)のフォーム

不明な点がある場合、協会ホームページの問い合わせフォームから質問することも可能です。

医療機関・薬局での確認

医師・薬剤師への提示

受診時や薬局での購入時に、最新版の「薬剤師のためのアンチ・ドーピングガイドブック」を提示し、ドーピング検査を受ける可能性があることを伝えて相談してください

市販薬の注意

かぜ薬、咳止め、胃腸薬、育毛薬など、身近な市販薬にも禁止物質が含まれているケースが多いため、自己判断せず薬剤師に相談することが重要です

サプリメントに関する注意

サプリメントは、製品ラベルに表示されていない禁止物質が混入しているリスク(コンタミネーション)があります。そのため、禁止物質が含まれていないことを自主的に検査しているメーカーの製品やアンチ・ドーピング認証を受けている製品を選ぶことが推奨されています。

おすすめサプリメントの紹介は下記を参考にして下さい↓

アンチ・ドーピングのルールは複雑に見えますが、基本を押さえておけば安心して競技に臨めます。

最後に重要なポイントを3つにまとめます。

  1. 自己責任の原則を常に意識する:意図的かどうかにかかわらず、自分の体に取り入れるものの責任はアスリート自身にあります。
  2. 薬やサプリは必ず事前に確認する:Global DROなどの検索ツールや、スポーツファーマシストを活用して、自己判断によるミスを防ぎましょう。
  3. TUEは早めに申請する:審査に数週間かかるため、治療が必要な場合は余裕をもって早めに申請しましょう。

クリーンなスポーツで全力のパフォーマンスを発揮するために、アンチ・ドーピングの知識をしっかり身につけておきましょう!

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